医療機関ウェブサイト広告規制 〜ウェブサイトの事例解説書(第3版)〜
これまで2021年7月26日に厚生労働省が発表した「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」について、初版、第2版と解説してきましたが、2023年10月6日に第3版が発表されましたので、変更点や追加点について紹介したいと思います。
INDEX
医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第3版)
第3版では下記項目について修正、追加されています。
修正 |
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新規追加 |
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上記の中から気になる事例について紹介します。
【修正】他の医療機関との比較(比較優良広告)
まず「他の医療機関との比較(比較優良広告)」ですが、事例③が追加されました。
簡単にいえば「他の医療機関を誹謗してはいけない」という内容です。
確かに下記ガイドラインの該当箇所には誹謗に関する記載はありませんが、事例で周知が必要なほど多く掲載されていることが伺えます。
おそらく他の医療機関より優位に立とういう意図ではなく、危機感、正義感から危険な医療行為に対する注意喚起の場合がほとんどではないかと思いますし、そう願いたいですね。
法第6条の5第2項第1号に規定する「他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと」とは、特定又は不特定の他の医療機関(複数の場合を含む。)と自らを比較の対象とし、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、自らの病院等が他の医療機関よりも優良である旨を広告することを意味するものであり、医療に関する広告としては認められないものであること。「医療広告ガイドライン」より抜粋
【追加】ビフォーアフター写真関連
美容医療サイトで良く見るビフォーアフター写真関連の事例が3つ追加されました。
改めてビフォーアフター写真掲載に関するガイドラインを確認しておきましょう。
(7) 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等省令第1条の9第2号に規定する「治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告をしてはならないこと」とは、いわゆるビフォーアフター写真等を意味するものであるが、個々の患者の状態等により当然に治療等の結果は異なるものであることを踏まえ、誤認させるおそれがある写真等については医療広告としては認められない。
また、術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合についてはこれに当たらない。さらに、当該情報の掲載場所については、患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮し、例えば、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用してはならない。
なお、治療効果に関する事項は広告可能事項ではないため、第5に定める要件を満たした限定解除の対象でない場合については、術前術後の写真等については広告できない。
「医療広告ガイドライン」より抜粋ガイドライン上では「認められない」「これに当たらない」などわかりにくい言い回しで書かれていますが、簡単にいうと
- 患者さんの状態によって治療結果はちがうから、ビフォーアフター写真は掲載しちゃだめだよ。
- でも治療内容や費用、副作用などのリスクと一緒に掲載するならビフォーアフター写真を載せていいよ。
- その際は限定解除の要件も満たしてね。
ということです。
限定解除の要件も再度確認しておきましょう。
広告可能事項の限定解除が認められる場合は、以下の①~④のいずれも満たした場合とする。ただし、③及び④については自由診療について情報を提供する場合に限る。
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
「医療広告ガイドライン」より抜粋今回「(21)ビフォーアフター写真(省令禁止事項)(注意が必要な事例 2/2)」にて、初めてSNSに触れる事例が追加されました。近年SNSを活用し、積極的に情報発信する医療機関が増えている事が背景にあると思われます。
事例自体は、3つとも医療広告ガイドラインを理解していればNGとわかる内容です。ビフォーアフター写真はとても効果的で患者を増やすための重要なコンテンツですので「より魅力的に見せよう、見せたくないものはなるべく見えないようにしよう」という意識が違反に繋がっているのでしょうね。
【追加】提供する医療の内容等について誤認させる広告(誇大広告)
この事例に頭を抱えている医療機関も多いのではないでしょうか。
これまで「日本一」「最高」など、おおよそ使わないですしNGとわかりきった表現の事例しかありませんでしたが「最先端」「最適」という、よく医療機関で使われる単語が明確に違反とされました。
特に「最適」は医療広告ガイドラインを確認した上で「この単語なら良いのではないか」と使っているケースも多いと思います。
【追加】体験談(省令禁止事項)
初版で「患者さんの体験談」「口コミサイトの体験談」、第2版で「医療機関スタッフの体験談」「医療スタッフが患者さんの体験談を記載」「口コミサイトの編集依頼」の事例が追加されましたが、第3版でも「患者直筆アンケート掲載」「症例紹介内で体験談を記載」と新たに2つの事例が追加となりました。
これで体験談に関する事例は事例集内で最も多い6つとなります。それだけ違反しているサイトが多いという事ですね。
体験談に関する見解については下記が分かりやすいので確認しておきましょう。
Q1-18 医療機関の検索が可能なウェブサイトに掲載された、治療等の内容又は効果に関する体験談は広告規制の対象でしょうか。
A1-18 特定の医療機関の体験談に誘引性がある場合には、広告規制の対象となり、治療等の内容又は効果に関する体験談を掲載することはできません。
例えば、医療機関が患者やその家族に(有償・無償を問わず)肯定的な体験談の投稿を依頼した場合は、当該体験談には誘引性が生じます。
一方で、医療機関の検索が可能なウェブサイトに掲載された体験談が、医療機関からの影響を受けずに患者やその家族が行う推薦に留まる限りは、誘引性は生じません。
しかし、医療機関が患者やその家族に(有償・無償を問わず)肯定的な体験談の投稿を依頼していない場合であっても、例えば、当該ウェブサイトの運営者が、体験談の内容を改編したり、否定的な体験談を削除したり(当該体験談が名誉毀損等の不法行為に当たる場合を除く)、又は肯定的な体験談を優先的に上部に表示するなど体験談を医療機関の有利に編集している場合、それが医療機関からの依頼によって行われたものであるときには誘引性が生じます。
また、仮に医療機関の依頼により行われたものではないとしても、事後的に医療機関がそのように編集されたウェブサイトの運営費を負担する場合には、当該編集された体験談に誘引性が生じると考えられます。
このように、特定の医療機関の体験談に誘引性が認められる場合は、治療等の内容又は効果に関する体験談を掲載することができません。
「医療広告ガイドライン」より抜粋【追加】費用を強調した広告
「費用を強調した広告」の事例は第2版に続き、第3版でも追加となりました。
第2版では「会員特典」、第3版では「モニター募集」の事例ですから、なんとしても金額的なメリットの強調で訴求をしたいと考える医療機関が後を絶たないということなのでしょう。
医療広告ガイドラインでは「費用を強調した品位を損ねる内容の広告は、厳に慎むべきもの」という曖昧な表現のため様々な解釈が生まれており、それを是正する意図が伺えます。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
追加・修正された事例のほとんどは一部の医療機関に対する警告的な内容でしたが、誇大広告の事例はどの医療機関でも確認、検討すべきものとなっています。
「最適」「最新」「最先端」などはつい使ってしまう言葉ですので、改めてウェブサイトを見直してみましょう。
この記事を書いた人
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大学卒業後、バンド活動を経て2003年にアーティスへ入社。
営業兼コンサルタントとして、これまで携わってきたWebサイトは500サイト以上、担当したクライアント数は300社以上にのぼる。
現在は、豊富な経験を活かした提案を行いながら、ソリューション事業部 部長として事業戦略の勘案や後進育成にも取り組んでいる。
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