みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)の狙いとは
2016年4月20日 総務省は国及び地方公共団体等の公的機関のホームページを対象にした「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)」を策定、公表しました。
今回策定された「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)」は2005年度に作成、2010年度に改定された「みんなの公共サイト運用モデル」の内容をJIS X8341-3:2016の改正(2016年4月7日公開)や障害者差別解消法の施行(2016年4月1日施行)を受け、改定・改称されたものですが、なかなか進まない公的機関におけるウェブアクセシビリティへの対応状況を打開すべく、より踏み込んだ内容となっています。
公的機関におけるウェブアクセシビリティ対応状況
ウェブアクセシビリティ基盤委員会が2015年11月に行った「公的機関におけるウェブアクセシビリティ方針策定と試験結果表示の実態調査」では、都道府県47団体中、ウェブアクセシビリティ方針を策定し公開している団体が29、総務省が定めた試験を行い結果を公開している団体が14団体と報告されています。
すでにウェブアクセシビリティ方針や試験結果を公開している団体についてはウェブアクセシビリティ方針を改訂したり、試験対象を拡大したりするなど、継続的な取り組みがされていますが、試験結果を公表している団体は半数にも満たず、試験を実施したことで逆にウェブアクセシビリティ方針の掲載を取りやめる団体もあり、公的機関におけるウェブアクセシビリティへの対応が進んでいるとは言えない状況です。
公的機関ウェブ担当者の教育と意識改革
上記のような状況の中で今回の運用ガイドラインが公表された訳ですが、ガイドラインの内容を見ますと公的機関ウェブ担当者の教育と意識改革を促したい総務省の狙いを読み取ることができます。
「ウェブ制作会社任せ」からの脱却
公的機関は今回の改定で1年に1回、ウェブアクセシビリティに関する取り組みを確認・評価し、ウェブサイト上に公開する事が新たに求められるようになりました。
取り組みの確認・評価には総務省が用意した「ウェブアクセシビリティ取組確認・評価表」を利用することになりますが、その内容を見ると
- 毎年アクセシビリティに関する職員研修を実施、又は参加しており、来年度以降も継続する予定である。
- 団体として策定した共通のガイドラインに則って運用するとともに、ガイドラインの見直すべき点を洗い出し、見直しに参加している 。
- 継続的にアクセシビリティをチェックするモニター制度を設け、ホームページの改善に利用している。また、関係部署等と連携し、利用者のホームページ閲覧等のスキル向上につながる取組を行っている。
など、公的機関ウェブ担当者自身の行動・取り組みを評価する項目となっています。
これまでの試験や評価では、「JIS X 8341-3:2016の適合レベルAAに準拠するようウェブサイトを制作する」など制作会社に依存するケースが多く、公的機関ウェブ担当者の知識や意識が育っていないという背景から今回の評価項目が作成されたと推測できます。
まとめ
- 2016年4月20日 総務省より「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)」が策定、公表された。
- ウェブアクセシビリティ基盤委員会が2015年11月におこなった「公的機関におけるウェブアクセシビリティ方針策定と試験結果表示の実態調査」ではウェブアクセシビリティへの対応が進んでいるとは言えない状況だった。
- 「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)」では新たな取り組みを確認・評価項目が設定され、公的機関ウェブ担当者の知識や意識を高めたい総務省の狙いが読み取れる。
「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)」は前回の「モデル」という名称から「ガイドライン」という、より強い名称に変更されています。
2017年度末までに対応という期限が設定されていますが、どのくらいの団体が対応するのか改めて調査をしたいと思います。
この記事を書いた人
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大学卒業後、バンド活動を経て2003年にアーティスへ入社。
営業兼コンサルタントとして、これまで携わってきたWebサイトは500サイト以上、担当したクライアント数は300社以上にのぼる。
現在は、豊富な経験を活かした提案を行いながら、ソリューション事業部 部長として事業戦略の勘案や後進育成にも取り組んでいる。
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