「ユーザーストーリーマッピング」を読んでみた 【0章の1】
アーティスでは、一部のソフトウェアにてドメイン駆動開発(DDD)を取り入れています。
DDDでは適切なドメインモデルを探す事が重要になりますので、そのために使われるユビキタス言語も同じく重要になってきます。
今回、私がこの「ユーザーストーリーマッピング」(Jeff Patton 著、長尾 高弘 訳 O’REILLY)を読んだ理由は、ユーザーストーリーを学ぶ事で、このユビキタス言語の発見や定義に役立つと思ったからです。
ユーザーストーリーは、ユースケースに比べてユーザーが得られる結果により注目し、システム内部の詳細や他のシステムとの相互関係を知らなくても記述できます。
つまりこれは、ドメインエキスパートと共にストーリーを通してユビキタス言語を定義できるという事です。
このような理由から、DDDとユーザーストーリーはとても親和性が高いと考えました。
ユーザーストーリーマッピング(Jeff Patton 著、長尾 高弘 訳 O’REILLY)
本書はユーザーストーリーマッピングの作者、ジェフ・パットンが自ら開発した手法について書き下ろした書籍です。
ストーリーマッピングの概要、優れたストーリーマッピングを作るためのコンセプトから、ユーザーストーリーを完全に理解する方法、ストーリーのライフサイクルの認識、イテレーションやライフサイクルごとにストーリーを使う方法まで、手法全体を包括的に解説します。
マーティン・ファウラー、アラン・クーパー、マーティ・ケーガンによる序文、平鍋健児による「日本語版まえがき」を収録。
製品開発、UXデザイン、業務要件定義の現場で、関係者が共通理解を持ち、使いやすく・実現可能なサービスや商品を作りたいと考えているすべての人、必携の一冊です。amazon.co.jp
最も重要なこと
この本に書かれている最も重要な事は以下の2つです。
- ストーリーを使う目的は、良いストーリーを書くことではない
- 製品開発の目的は、製品を作ることではない
ユーザーストーリーの本を読んでいる人なら、良いストーリーを書くことが重要だと思いがちですが(私もそうでした)、それが目的ではないということです。これは以下で説明していきます。
一方、製品開発の目標が製品を作ることでない事は、多くの人が理解しているのではないでしょうか。
ユーザーや顧客が持つ、なにかしらの問題や悩みを解決すること、つまり「ソリューションの提供」が製品開発の目的になるはずです。
伝言ゲームと共通理解
伝言ゲームは、話し言葉でのインプットとアウトプットですが、この不正確さを例に上げて、書き言葉(文字)で記録しても同じことが起こると指摘されています。
- 共有ドキュメントは「共通理解」ではない。
顧客の要求を文字通り記録して共有していても、「共通理解」が無いと全く別の物を指している可能性があるということです。
なぜなら、文字で記録していても、読む人によってはイメージが異なるからです。
当書に出てくるケーキの注文の例は非常に面白いので、ドキュメントの正確性を疑わない方にはぜひ読んでもらいたいです。
共通理解を築くために
共通理解を簡単に作れて、永続化できるのであれば、ドキュメントも画像も動画もいらないわけですが、それは無理な話です。
では共通理解をどうやって築いて、保存しておくのでしょうか?
実際に集まって話す
共通理解を築くには、むしろこの方法が一番効率よく、唯一なのではないかと思います。
実際に集まって、自分の考えを文字や言葉、絵や図でアウトプットして、他の参加者と同じイメージを共有できているか確認します。
また、それぞれでアイデアをインデックスカードやポストイットで出し合って、組み合わすことで、最良のアイデアと共通理解を得ることができます。
完璧なドキュメントを書こうとしない
ドキュメントは書き手、読み手によってイメージするものが異なるので、決して完璧を目指してはいけません。
完璧を目指すより、共通理解を得るために必要なものを何でもいいから書くことが大切です。
当書では、ユーザーストーリーの目的は「共通理解をつかむこと」で、良いストーリーを書くことは目的からズレていると指摘されています。
ドキュメントは、バケーションの写真のような物で、写真を見れば実際にそこに行った時のイメージが蘇ります。
なので、実際にあつまって話した場にいなかった人が、ドキュメントを見ただけで共通理解が得られるものではありません。
しかし、ドキュメントを書かないというわけではありません。
ドキュメントは、過去のイメージを蘇らせてくれるツールなので、文字やメモ、絵や図だけではなく、短い動画を使って出来る限り記録すべきです。
まとめと感想と復習
- 共通理解を得ることが全て
- 共通理解を得るには実際に集まって、アイデアを出し合う
- ドキュメントを過剰に信用しない
- 共通理解を甦らせるために、いろんなメディアをつかってドキュメントを作る
私は法律関係の事を全く知りませんが、法における共通理解を得るためには、可能な限り正確に記述された膨大な量のドキュメントが必要なのだと思います。
それでも、専門家によっては理解が異なるらしいので、やはりこの共通理解の難しさがよくわかります。(判例とかよく勉強されていますよね!)
ドキュメントというと文字だけのイメージですが、共通理解を築き、それを蘇らせるためには、画像や動画にかぎらず、利用できるものは全て積極的につかって行くべきだと思いました。
復習用の質問
- 共通理解とはどういうものですか?
- 共通理解を築くにはどうすればいいですか?
- ドキュメントやユーザーストーリーの目的はなんですか?
- 共通理解を甦らせるためには、どうすべきですか?
この記事を書いた人
-
2008年にアーティスへ入社。
システムエンジニアとして、SI案件のシステム開発に携わる。
その後、事業開発部の立ち上げから自社サービスの開発、保守をメインに従事。
ドメイン駆動設計(DDD)を中心にドメインを重視しながら、保守可能なソフトウェア開発を探求している。
この執筆者の最新記事
関連記事
最新記事
FOLLOW US
最新の情報をお届けします
- facebookでフォロー
- Twitterでフォロー
- Feedlyでフォロー